今年の前半は、鯉沼ミュージックにとって大変喜ばしいことが二つありました。
まず最初は、現在最高のジャズ・ピアニストであり、私の永年の友人でもあるキース・ジャレットが、スウェーデンのポーラー音楽賞を5月12日に受賞し、スウェーデン国王から直接に10万ドルの賞金を贈呈されたことです。
ポーラー音楽賞は、1976年に「ダンシング・クイーン」で全米No.1を記録したスウェーデンのポップ・グループ、アバのマネージャーとしても有名な作詞家、故スティーグ・アンダーソンが、スウェーデン王立音楽アカデミーへの巨額な寄付を元にして、音楽の創造および発展に絶大な貢献を残した個人、グループ、団体に授与する為に1989年に設立しました。この賞が素晴らしいのは、音楽のジャンルや人種に全く関係なく、全分野、全世界を見渡して、その年の受賞者を二名選び出すことです。
その為に、今では世界で最も誉れの高い、音楽業界のノーベル賞と言われるまでに成長しています。
そのことは、ポール・マッカートニー(英国)、ジョニ・ミッチェル(米国)、ラビ・シャンカール(インド)、カールハインツ・シュトックハウゼン(ドイツ)、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(ロシア)、ヤニス・クセナキス(ギリシア)など、過去の受賞者の名前を何人か並べただけでも充分に証明出来ます。

2番目の吉報は8月4日に報じられました。
それは、The Synergy Live2003で観客を魅了したスウェーデンのグループE.S.T.(エスビヨルン・スヴェンソン・トリオ)のリーダーでピアニストのスヴェンソンがイギリスのBBCが主催するJAZZ AWARD2003で、インターナショナル・アーティスト・オブ・ジ・イヤーを受賞したことです。世界中のピアノ・トリオの中で、最も革新的なグループであり、ジャズ、ドラムンベース、ファンク、ロック、クラシックなど、様々な要素をとり入れた独創的で斬新なスタイルを確立していることが受賞に繋がりました。
ぼくが、The Synergy Live2003の企画を昨年キースに話した時、彼も、ヨーロッパの若手ではスヴェンソンがもっとも才能のあるピアニストだと太鼓判を押しました。既にその時点でぼくはE.S.T.と契約は終っておりましたが。

スウェーデンの財団がアメリカのジャズ・ピアニストに賞を出し、イギリスの放送局がスウェーデンのピアニストに賞を与える。これらの賞の選出者がグローバルな視点を持ち、音楽を吟味する的確な耳を持っていることにつくづく感心します。
しかし、日本では、彼らの受賞がほとんど報道されることがないのが残念です。
また、これらの賞に比べ、日本の文化・芸術関連の賞が、年功序列で選ばれたとしか思えないような受賞者に与えることが多々あることを感じます。
今現在の実績を元に選出するのではなく、お疲れ様という意味合いが強い選び方がされているようにも思えます。今、素晴らしい成果を挙げている人を評価していないということです。世の中では、構造改革という言葉がしきりに囁かれていますが、政府だけではなく、日本の文化を担っている関係者、音楽業界の人たち、マスコミ関係者も、そろそろ構造改革を実施してもいい頃では、と思う今日この頃です。