「キース・ジャレット最新コンサートを聴いて」
 僕はここ何年かの間に、ニューヨークで3回、キース・ジャレットのコンサートを聴いている。1998年11月のニュージャージー、パフォーミング・アート・センター、2000年5月ニューヨーク、カーネギーホール、そして今年6月26日に同じくカーネギーホールで行われた、キース・ジャレット、ゲイリー・ピーコック、ジャック・ディジョネットによるトリオのコンサートである。

このコンサートは、「JVC Jazz Festival New York」の中のプログラムのひとつとして行われたもので、大変多くの観客が集まっていたが、正直に言うと、いつものキース・ジャレットのコンサートとは、客層も含め、多少違った雰囲気があったと思う。

キースは、良く言えば非常にリラックスした雰囲気で演奏していたが、独特の張り詰めるような緊張感がなく、同じトリオのコンサートとしては、4月の東京文化会館での公演の方が、断然良かったと思った。

曲目は、6月28日付の「The New York Times」のコンサート評の見出しに、「A Melange of Hollywood, Broadway and Bebop Tunes」と書かれているように、かなりバラエティにとんだものとなっていた。(曲名は下記参照)

コンサート全般においては、ジャックの演奏の素晴らしさが際立っていたように思う。2部の1曲目「Honey Suckle Rose」では、キースのピアノの音から雰囲気をうまくつかみ、キースが思い描くイメージ通りの演奏をしていた。キースがゲイリー、ジャックの二人に絶大なる信頼を置いているという事が、こういった音楽の捉え方における3人の感性の呼応が、実に自然な形で生まれてくるところからも伺える。6月28日付の「The New York Times」でも、ジャックの演奏は大変素晴らしいと絶賛していた。

客層は、フェスティバルということもあって、観光客と思われる人が多く、演奏に対するリアクションが鈍かったし、何より僕が驚いたのは、録音・カメラ・ビデオ撮影は一切不可という場内アナウンスにもかかわらず、フラッシュを使っての写真撮影をする人の多さだった。アンコールの前に、3人が舞台上に寄り添って並んだ時に、ものすごい数のフラッシュの光が場内にきらめいたのである。当たり前だが、キース自身がこれには参ってしまったようで、こんな事も初めてだと思うのだが、「カメラ撮影はやめてほしい」と舞台上から直接、観客に語りかけてからのアンコール演奏開始となった。ところが、信じられないことに、アンコール演奏の途中で、またフラッシュが光ったのだ。この時、キースはピアノを弾きながら、鍵盤に触れてしまうのではと思うくらいの、かなりのオーバーアクションでガックリと頭を垂れていた。よほど残念に思ったに違いない。

最後に、カーネギーホールの客席の素晴らしさについてひと言。

このホールの客席は、椅子の幅・大きさ・座り心地、そして前列とのスペースも申し分なく、身体的に最高の環境でコンサートに集中できる。日本のコンサートホールで、ここの客席と同格のシートを持っているところは、大阪の「フェスティバルホール」以外にはちょっと思いつかない。特にバブル期からそれ以降に出来たホールには、満足のいくものはないと言っていい。嘆かわしい日本の音楽環境の現実である。

< 曲目 >

(1部)
 1.On Green Dolphin Street
 2.I’m Getting Sentimental Over You
 3.(Ballade)
 4.(Free Improvisation)
 5.Yesterdays


(2部)
 1.Honey Suckle Rose
 2.What’s New
 3.Lover
 4.(Keith’s Original)
 5.One For Majid

(アンコール)
 1.不明
 2.Straight No Chaser
 3.不明