【鯉沼's Special・vol-35】(06月25日発信)

<ザ・シナジー・ライブ2003 最終レポート>

The Synergy Live2003、いよいよ今日は最終日。
今日は、日本から特別参加のピアニスト、
石井彰と、サックスの川嶋哲郎がトップ・バッターです。

欧州のピアニストは空間を埋め尽くすサウンドが得意ですが、
石井彰は、間(ま)を活かした演奏を楽しませてくれました。
しかも1曲目は何と武満徹作品。
サックスの川嶋哲郎とのデユエットでも、
充分に余韻を残した二人の演奏は、
1週間ステーキ定食が続いた後の、山菜料理のようなさっぱり
として後口。さしづめ、音の口直し、箸休めのようなゆったり
とした時間が会場内を包みました。

セカンド・セットはジャン・ミッシェル・ピルクのソロ。
基本的には、トリオでの演奏と変わらないトリッキーな演奏
で、楽しませてくれました。

ピルクの場合はやはり、21日見たトリオでの演奏が圧倒的に
面白い。それは、ステージ上の楽器の配置を見ただけで、
演奏に対する彼らの姿勢がうかがえます。
客席を向いているのはベーシストだけ。
ベーシストに向かって左手に位置するピルクは、客席にほぼ背
中を向け、ベーシストの方を向き、
ベーシストの右手に座るドラマーは、
客席から見ると真横に向かい、ピルクを真っ正面に見ながら演
奏します。
三位一体、三つ巴の態勢なので、常に共演する二人を目の当た
りにしながら演奏出来る。
ピアノ・トリオの演奏に革命を起したのが、
ビル・エヴァンス・トリオ。
エヴァンス以前のピアノ・トリオの場合、
ベーシストとドラマーがピアニストの伴奏者だったが、
エヴァンスは3人が対等に演奏するスタイルを確立した。
その後、キース・ジャレットのスタンダード・トリオが
今のピアノ・トリオのスタイルを確立して、現代に至る。
ピルク・トリオは、より攻撃的に三者が拮抗するスタイルに
邁進します。
共演者の演奏に敏感に反応して自分の演奏をつきすすめるの
で、条件反射100%のスリリングな演奏が展開します。
こ〜なると、もう、ほとんど格闘技と言えるでしょう。
ピルクの『ライブ・アット・スイートベイジル』を聞き、
予想していたこととは言え、
目の前で見る彼らの演奏は、本当にスリリングで笑いだしてし
まう程でした。
隣で一緒に見ていたピアニストの石井彰さんも、
演奏終了後はスタンディング・オーベションをする程
熱狂していました。

ピルクの硬軟自在でトリッキーな演奏は本当に見事。
今回来日した他のピアニストたちが、
ピアノを弾きこなしているのに対し、ピルクは、
音や鍵盤と戯れている。
21世紀のピアノ・トリオの姿を見た、と言ったら、言い過ぎだ
ろうか。

そして、
The Synergy Live2003の最終セットを飾ったのがアントニオ・
ファラオ・トリオ。怒濤のようにエネルギーが爆発し、それが
最初から最後まで途切れることなく続きました。
音楽的には違いますが、
どこかマッコイ・タイナーのような一途さを感じさせる
演奏です。
猛烈なエネルギーを感じさせるファラオのピアノですが、
まったく崩れず、乱れず、まっしぐらな演奏は、流石です。

この日の感想メールを頂いたので、ご紹介します。


Subject: シナジーライブ、6.22

はじめてお便りいたします。
昨日(22)、シナジーライブに出かけました。
きっと、面白い、きっとわくわくするような悦びに
出合うにちがいないと楽しみにしていました。

もう、本当に昨日は、心も身体も存分に楽しませて
いただきました。
日本から石井彰さん、フランスから
ジャン=ミッシェル・ピルクさん、そしてイタリアから
アントニオ・ファラオ・トリオの方々。
三者三様ですね。
ピアノの音色も本当にお一人、お一人違っていました。
ホールも楽器の一つとして選ばれたとの事ですが、
音楽を身体で受け止めることができました。
水面に、小石を投じれば、波紋が広がるように、演奏される音
の一つ一つは、ゆっくりと(時には猛烈なスピードで)
身体の中に入ってきました。
音楽の海に横たわっている、
そんな心持がしました。
そしてそれは、なんて心地の良いものだろうと感じます。
海に浸かって、一皮向けたというのも変ですが、
演奏が終わって帰る時には、
非常にさっぱりした気持ちになって、ああ、仕合わせ、と思い
ました。

そして、最期にお礼を。
素敵な演奏会をありがとうございます。
また、こういった演奏会を開かれることに期待しています。
                        小田真理
又、18日の感想を書かれたサイトがありますので、
ご覧下さい。
http://homepage.mac.com/qzz00511/hp/

本当に様々なタイプの演奏家たちの個性が炸裂したThe
Synergy Live2003でしたね。一言でジャズと語りきれない程、
色んな音、音楽、そして豊かな響きを
身体いっぱいに浴びることが出来ました。

きちんと整備された楽器(ほとんどのピアニストが弾いたピア
ノは、現代最高のピアニストと言われているポリー二に、
このピアノが弾けるのならば、
わざわざ自分のピアノを持ち込む必要がないとまで、言わせた
すばらしい響きを持ったもの)と、
そして、その楽器から最良の音を引きだすことの出来る
優秀な演奏家、
そして三番目に、
楽器から出た音を最も美しく響かせることの出来るホール。
三位一体となったシナジー効果を堪能出来た6日間だと
感じましたが、いかがでしたでしょうか。

The Synergy Live2003の余韻をゆっくりと楽しんでいるうち
に、来年の企画が持ち上がり、準備が始まることでしょう。

35回もの間お付合いを頂きましたこのメルマガも
これで終らせて頂きます。
長い間、ご愛読ありがとうございました。

曲目表:
石井彰
1) リタニ(武満徹)
2) アザン(石井彰)
3) ミラージュ(川嶋哲郎)
4) ホライズン(川嶋哲郎)
5) エターナリー(石井彰)

ジャン=ミッシェル・ピルク(ソロ)
1) Scarborough Fair (Simon & Garfunkel)
2) Cardinal Points (J.M.Pilc)
3) If I should lose you
4) O Grande amor (Jobim)
5) Waltz in A♭(F.Chopin)
6) All the things you are (Ken Hauwerstein)
7) Take the A train (B.Strayhorn)

アントニオ・ファラオ・トリオ
1) I’m nothing
2) Theme for Bond
3) Creole
4) Sweet
5) What this thing called love
6) Andalusia
7) Black Inside
8) Far Out

The Synergy Live2003への感想を、お待ちしております。
宛先はここ。
magazine@koinumamusic.com
The Synergy Live2003のご案内はタクオでした。

<編集部より>
レポートの最後に曲目表を掲載していますが、
アーティスト本人が書いたメモを基にしていますので、
なかなか手書きというのは読みとりにくく、
又、実際の演奏の時に変更になる時もあります。
演奏後に曲目表を書いてくれても、本人が忘れてしまった場合
もあります。何か間違いなどお気づきの点がありましたら、遠
慮なくご指摘下さい。

残念ながらスタッフとして関わっていると客席に座って公演を
楽しむという機会はありません。私自身も仕事の合間に楽屋の
モニターを見たり、袖からちらっと覗く程度にしか演奏は見ら
れませんでした。その分、楽屋での彼らの素顔や本番前の緊張
した表情を垣間見ることができましたので、ここで少し紹介し
たいと思います。

ステージ袖で出番を控えている時、アーティストはそれぞれの
喝の入れ方があるようです。E.S.T.のエスビヨンは瞑想(?)
をして、精神統一をしているようでした。比較的落ち着いて見
えたピルクは口笛の練習をしているのを見かけましたが、ソロ
の出演の日は会場入りしてすぐにコーヒーを持って楽屋に籠
もっていました。アントニオは陽気なイタリア人らしく、バン
ドのメンバーや日本人スタッフと談笑していることが多かった
ですが、出番直前には椅子に座りしきりに指ならしのようなこ
とをしていました。合気道を習っているというマリアは体を動
かして準備運動。マリアもナタリーもヘアメイクは自分でやっ
ていました。

毎日出演前にサウンドチェックの時間がありましたが、それ以
外の時に一番練習をしていたのは、おそらくトリオ・トウケ
アットのメンバーたちだと思います。次にE.S.T.のエスビヨン
です。初日には練習らしい練習はしていなかったのですが、大
阪から戻るとすぐに練習を始め、何と日本を出発する日も会場
に来てピアノを弾いていました。次の公演地(カナダ)のため
だと思います。バンド全体でリハーサルをしていたのはアント
ニオのところです。彼らは時差ぼけがかなりあったようです
が、そこはプロ。眠い、眠いと言いながらもリハーサルはきち
んとやっていました。

20日だったと思いますが、ピアノの置いてある楽屋で、エス
ビヨン、アントニオ、ナタリーのベースのサル・ラ・ロッカの
3人が一緒になり、初対面だったらしく互いに自己紹介をして
いました。
2回の出演日ともに一緒だったアントニオとピルクですが、彼
らはすでに知り合いだったので、お互いのバンドのメンバーも
入り交じり、楽屋ではかなりにぎやか。楽屋ではこうした交流
があり、アーティストたちにとっても楽しい時間だったのでは
ないかと思います。アーティスト本人からも、今回の公演に参
加して、素晴らしいピアノを素晴らしいホールで演奏できてと
ても光栄だったとメールが来ています。こういった現場に立ち
会えたことを私もとても幸せだったと感じています。長い間、
本当にありがとうございました。

鯉沼ミュージック 江森

PS:アンケートにあった質問にひとつお答えします。
  アントニオがかけていたメガネはアルマーニだそうです。